instrument

hurdy gurdy / vielle à roue (luthier:
Denis Siorat)

英語圏では「hurdy gurdy」、フランスでは「vielle à roue」、ドイツでは「drehleier」、スペインでは「zanfona」、 ハンガリーでは「tekeru」 等々、その土地によって呼び方は様々。日本語では「手回しフィドル」とでも言えばいいのであろうか。 ここでは一般的におそらく認知度が高いであろう名称「hurdy gurdy = ハーディーガーディー」で統一する。

ハーディーガーディーは11世紀以前にはすでに発生していたようで、実に約1,000年の長い歴史をもつ楽器だ。 楽器の構造や機能は中世~ルネッサンス~バロック期にかけて音楽の発展とともに改良を重ねてきた。

特に、バロック後期のフランスでは
貴族の間で田舎風カルチャーが流行り、ヴィヴァルディの偽名で出版したことで知られるニコラ・シェドヴィルの「忠実な羊飼い(Il pastor Fido)」などをはじめ、数多くのハーディーガーディー作品が残されている。 また、古典派の時代に入っても、レオポルド・モーツアルト(アマデウスの父)の作品や、 ハイドンによるlira organizzata(ハーディーガーディーとオルガンが一体化した楽器)のために作曲された作品などがあり、数は少ないながらも作品は作られていたようである。

だが、ローカルなフォークダンスなどの民謡は水面下で伝承されていたにせよ、メインカルチャーとしての西欧音楽史では、近代音楽の発展とともに、この楽器はほぼ淘汰されていく流れだったといっても差し支えないだろう。つまり、西欧近代音楽 の複雑な和声に耐えられる楽器ではなかったのである。