instrument
現代から近年にかけては、古楽のリバイバルなどもあり、ハーディーガーディーも見直されて きているようだ。実際に、現在もヨーロッパ全体、特にフランス、ドイツ、イギリス、ハンガリーでは この楽器を製作する工房が点在している。楽器の仕様も様々で、懐古趣味的な古楽器のレプリカ・モデル の製作をはじめ、さらに重要なのは、現代に合わせた楽器の改良を行う工房も存在することである。
Denis Sioratはコンテンポラリー仕様のハーディーガーディー製作者として先駆的存在で、 この楽器の可能性を飛躍的に拡大させた功労者のひとりだと言える。
多くの工房と同様、楽器はオーダーメイドなため、 ボディの素材や弦の本数など仕様は購入者の任意で決められる。Sioratの工房では現代的な演奏に耐えられるように、 様々なオプションを用意している。例えば、ボタンで調を変えるキー・チェンジャー(カポ)、 トロンペット弦やドローン弦でグリッサンド奏法などを可能にする指板、弦の種別によってアウトプットのチャンネルをそれぞれ分岐させたエレクトリック仕様におけるピックアップ・システム等々、演奏の可能性を拡げるオプションが多い。
これらオプションの数々は演奏家の演奏体験を通して得られたアイディアと、それらを 具現化させる楽器製作者の技術と知恵の 結晶である。それは、いまだにこの楽器が現在進行形で独自な進化をし続け、 また、その奏でられる音楽も同時に進化し続けている証拠だといえる。

遠い古から連綿と、鳴り止まぬドローンのように、魂の更新は絶えることなく今日に至っているのである。